随筆のコーナーへようこそ
〇このコーナーは、筆者の『井の中の蛙』的発想から世の中を眺め、気の赴くままに書き起こしたものです。
色々反論もあろうかと思いますが、田舎者のたわごとと思い、お許しください。 ( 2002:9:11更新)
田中前外務大臣更迭劇後、小泉改革は挫折の憂き目にある。医療改革諮問案も提示され、診療側にとっては大きな痛手である。しかしこれを痛手ととるか、健全な国政改革の一過程と捉え、歯を食いしばって耐えていくか、思いはそれぞれと思われる。
ただ今度の改革案で、一番不公平と思えるのは、再診療の減額である。初診から、4回目以降の再診が約半額に減額される。特に外科、整形外科系は月に3回や4回の受診で完治するような疾患は少なく、一週間に1度や2度の受診(投薬)で済む内科系とはおのずと取り扱う疾患の性質が異なっている。その意味から、かなり大きな不公平と言わざるを得ない。
有床診療所に関する問題点。
これは何も今回の医療法改正で問題となることとは違うが、有床の最も根幹に関る問題として、入院管理料の算定基準に関し、以前から疑問に思っていたことが有る。それは看護配置の問題で、入院管理基本料はⅠとⅡに大別され、Ⅰは更に現在3つに分類されている。即ち10人以上の看護配置、5人以上、1人、と分類される。それぞれ基本料が減額されていく。
今回の変更では、3人以上では1日につき15点追加される事になったが、何より問題なのは、対象は施設に対しての看護の人数を言うのであって、病床数に対しての人数を言うのではないということです。例え規定数の19床の診療所であっても、1あるいは2床であってもこの規定が適用されます。
元来、診療所が有する病床は、病院のそれとは異なり、医療法上の病床には当たらず、入院も48時間までと規制されています。そのくせ、地域の病床数は何床かという時には病院も診療所も関係なく全ての病床数の中に数えられてしまいます。まったくご都合主義です。
ここに来て特に問題となってきたのは、2年前から診療所の病床を施設基準を満たし、地域の病床計画の中で療養型病床に転換してもよいことになりました。またその療養型病床を一部あるいは全てを介護保険適用型に変更してもよくなり、有床診療所の形態が多様化してきました。そしてこの長期療養型病床に対しては病床数対看護人の割合を6:1、3:1という基準が設けられ入院管理料が算定されます。。
その結果病床を転換していったため、施設の従来の診療所病床は、当然施設の中で数が少なくなるわけですが、やはり施設に対しての看護配置を言うのだから、いくら少なくなっても前述の基準により入院管理料が決められてしまうというわけです。まったくおかしな話しです。それでなくても全国の有床診療所は2割強に激減してきました。どうあがいても診療所の病床は、所謂正規の病床ではなく国は必要としなくなったと言う事でしょうか。
療養型病床への転換には施設基準があり、中には転換したくても出来ない施設があったはずです。有床診療所は医師会などでも隅のほうに追いやられ、ほとんど問題にされなくなり、多くの開業医仲間の関心事ではなくなりました。しかし、今まで国の医療に果たしてきた役割りは少なくなかったとはずです。このように一番大切な入院基本管理料のこの基準はまったく不公平としか言いようがありません。
今後も私は有床診療所の諸問題に関心を持ち続けていくつもりです。なお、介護保険と診療所のかかわりに関し、またの機会に述べてみたいと思います。全国、各県の施設数、病床数、その種類などかなり詳しい統計資料が日医総研のホームページに掲載されていますので、興味のある方は是非アクセスしてみてください。
小規模医療併設型介護老人保健施設へ転換して(21,7,14)
医療保険対応の長期療養病床が近近廃止される事に伴い今年の4月入院施設を介護保険対応の老人保健施設へ転換いたしました。いつもの事ながら提出書類の多さに大変苦労いたしました。保健所の担当部署と約2ヶ月のやり取りが終わる頃になって計画に重大な欠陥が有る事に気付き大あわてをいたしました。その一つは人員要員としてリハビリ担当の専門家(OT,PTなど)がベット数19人の場合、100分の1時間必要だと言う事が判明したこと、更に4月から介護施設に転換あるいは新設する場合、スプリンクラーの設置が義務付けられていると言う事が解りました。
大慌てで理学療法士、作業療法士の募集を行う一方、県の担当者に「私の施設には急性期治療やリハビリを全て受け終わってこれ以上は無意味だと判断され、また家族もリハビリなど望んでいないのにどうしてリハビリ人員まで確保しなくてはならないのか、また100分の1時間リハビリをして何の効果も得られないと思うので、厚生労働省へどうしても必要なのかどうか質問してくれ・・・・・」とお願いしましたが、その後何の返事も得られませんでした。
きわめて運良く半日のパート労働を希望される理学療法士にめぐり合い、法的条件は一件落着しましたが、まだ割り切れない気持ちをいだいています。
スプリンクラー設置の件は、3月中に転換し終えたらその後4年間の内に設置すればいいという事が解り、結局3月31日に転換を終了しました。
今後数年の内にスプリンクラーを設置しなくてはなりません。これには補助金が用意されているようで、1平方メートルに9000円の補助が有るという事ですが、設計図を描き見積もりをしてみたら、合計金額の約半分の補助と言う事になるようです。
施設関係者の横の繋がりを是非強化すべきでは(21.7.14)
医師会、歯科医師会、薬剤師会などの職種別の組織はある一方、全国規模の介護施設連携は今だ聞いた事がありません。また介護支援専門員の学術団体?も行政主導のものは有るようですが、国や県に対し物言えるような団体とは決して言えません。
現場のこれらの責任ある立場の人たちはもっと全体で団結して、介護行政に対し主張すべきことは主張していかなくてはならないのではと以前から強く思っています。どなたか音頭を取ってやろうと言うような方は現れないのでしょうか。インターネットで見ると確かに小さなグループはいくつか見つけることは出来ますがこれでは力不足です。是非今後の介護行政の充実や働く現場の発展のために結成されることを希望いたします。
最近考えること
保険医協会の有床診療所担当理事をお引き受けしてからようやく2度目の正月を迎えます。その間協会の思想性について、初めはどうもなじめず、このまま理事として続けていけるかどうか、大いに悩みました。
どうも私がこの年に至るまで身につけてきたもの(思想)とはどこか異なっていて、ついて行けないと思ったからです。
元来全国保険医団体連合会(以下保団連)の目指すものは、簡単に言えば、「会員の生活の安定及び患者(国民)に対しより良き医療を守り生活の安定を目指すこと」と聞いています。しかし、保団連が発行している色々な出版物に目を通すと前会長の考えからして政治色の強い発言内容となっており、所謂左寄りの意見で統一されているように感じます。
もちろん上記保団連の目的として掲げていることを遂行しようとすればどうしても政治性、思想性が必要となってくるのでしょう。しかし個々の会員は千差万別の思想の持ち主の集合です。各個人がいかなる思想を持っていようがそれはは自由です。
しかし会長自らが、例えば歴史教科書問題に対する反対意見を述べたり自衛隊の海外派遣に反対したり、現在の医療改革から端を発し、小泉構造改革反対などの方向性を示されるとすれば、読者はこれら一連の意見がこの団体の持つ思想と勘違いしてしまいます。歴史教科諸問題だけとっても簡単に賛成だとか反対だとか言い切れません。
第一この問題に関して何が問題になっているのか国民に充分問題提起がなされませんでした。当時私はこの問題に関心があったので、注意深く見守っていました。当時マスコミも議論の本質を避け、またどういう思想の持ち主たちが教科書の選定をしていて、その根拠は何処にあるのかもほとんど知らされていません。
平和な世界を求めるという皆が同一の目的を求めてもその手段や方法論には色々有るのです。我々に必要なのは、それを判断するにたる情報、知識であり、安易に反対だとか賛成だとかいう結論じみた意見ではないはずです。
現在なお私は小泉構造改革、行政改革を何とか成功させ、しかもできるだけ早く成し遂げて、豊かな日本をもう一度取り戻すべきと考えています。景気誘導と称しどんどん借金を増やし公共事業をして来たことへの反省に立って国の経済を立て直さねばとおもいます。
医療が後退し、国民の医療費に対する負担が増え、医療現場がある程度苦しい思いをするのなら、改革後経済が許すようになってから、強力に要求することは要求して行けばいいのではと思っています。
出来れば小泉改革に反対するような意見、行動はすべきでないと思っていますし、むしろこれを応援し協力していくべきと考えます。実行される政策の評価は、時間がかかる事だから歴史に任せなければならない点があるので、ある意味では博打的な要素がありますが、それだからと言って現在の小泉構造改革に対する対案でもあるというのでしょうか。
昨年12月号の西部医師会報に武見敬三氏が構造改革と医療改革と題し意見を述べています。確かに現在の改革案の端はしでは彼の意見に傾聴すべきまた改革案の中に見逃せない矛盾点があるように思います。しかし現在の国の現状を愁うるなら、構造改革、医療改革の根本的な理念は一番に財政論的、産業政策論的であるべきではないでしょうか。
それにしても、田中外務大臣の更迭問題は、この改革に大きな不安を残しました。はたして小泉首相は改革を成し遂げられるのかと自問自答しています。やくざの集団のような周囲に対し改革をこのまま推し進めていくことが出来るのかと。
一方、悪意に満ちた厚生省の役人に対しては、充分監視が必要です。彼らが公表する統計、数値などはそのまま鵜呑みにすることは出来ません。自分たちに都合の良い数字だけを選択し、政策の拠り所とする危険性があります。このような暴挙を監視し公平な現状把握を推し進めることが我々の大きな役割と思います。
そのような気持ちに私が至っているのは、10年ほど前旧厚生省の役人であった友人(医師)が、厚生省の中では役人たちが「今に見てろよ、医者ばかり良い目はさせんようにするからな・・・・」を合言葉に、医療改革案?を計画していると聞かされたからです。
先日も財務省や健康保険組合は診療側の収益は7%増加しているから5.8%の診療報酬引き下げを行っても問題ないと発表していました。このような数字が本当に正しいとは実体験からどうしても納得できません。このような発表に対し、数字に間違いが無いのかどうかを保団連が力を発揮して検証し間違ってでもいるのなら会員や国民に説明していくべきと思います。
また山口県の吉岡という医師のホームページから最近入手した情報では、平成10年度の総医療費を30兆円とした場合全国のレセプト点数の上位1%未満で24%の医療費(7.2兆円)を、上位から1%-5%未満で31%(9.3兆円)の医療費を使っている。即ち上位から5%未満の人が半分以上の医療費を使っているということになります。
また平成10年6月審査分のレセプトのうち入院患者数は全体の3.5%しかないのに、使用した医療費の割合は外来で55.6%、入院で44.4%使用しているのだそうです。即ち全患者数の僅か3.5%のものが4割以上の医療費を使っているということです。これには驚きました。
もちろんこの数値の中には色々な要因があり、いちがにどうこう判断は軽率に出来ません。しかし有限の資源を使っていくのだから何かこの中から問題点を見出し改善すべき点が有るのなら、我々診療側から声をあげ、改善して行くべきではないかと思います。
藤井外科医院 藤 井 卓
関連リンク
レセプトから見た医療費の使われ方 http://www.jcoa.gr.jp/siten/content/resept.html
医療の実情ページ(吉岡春紀) http://www.urban.ne.jp/home/haruki3/resept2.html
命の値段(本田忠) http://www.jcoa.gr.jp/content/seimei.html
日医総研・総合分析センター http://acm.med.or.jp/